農業レポート
世界の農業が抱える課題
農業レポート#2 2.農業生産性と貿易事情(から経済発展と社会抗争の構図まで) 先進国が工業国で、開発途上国が農業国ではない。 穀物輸出の多い地域は 1位 北米 2位 オセアニア 3位 EU 一方、アフリカ、アジア、日本が輸入国である。 しかも、穀物移動量:136百万トンは世界の穀物生産量1880百万トンの 7.2%で、thin marketです。(自動車では貿易率は40%を超えている。) 日本は、毎年30百万トンを輸入。穀物自給率は28% この自給率に近い国は、韓国と台湾。今後アジアの国が発展すると中国沿海部も同様だが 日本と同じ状況になり、穀物の輸入依存度が急上昇する。 それでは、農業生産性の変化状況は (1965年から1995年の30年間) 先進国 途上国 中所得 低所得 ① 農産物増加率 ①=②+③ 1.2 2.2 2.1 2.3 ② 農業労働人口の伸び率 -2.2 0.7 -0.1 1.8 ③ 労働生産性増加率 3.4 1.5 2.2 0.5 低所得国はすべての指標で伸びているが、 人口上昇率がはるかにこれを上回るので 飢餓状況に追い込まれていく。 (何故、人口上昇率が先に上がるのか? 本来これを、先に解決しなければならない。 しかし、往々にして、一部の工業化、モノカルチャーが先行して、 貨幣流通量を拡大させ、それに伴い欲望が肥大化して行く。 併せて先進国文化・思考が導入されて、 自国全体のバランスを見ることなく 経済発展させることにより、 農産物全の生産性以上に人口上昇を招くことに なるのではないか。日本もその一例であろう。) ここまでは、教科書通りの展開を述べた。 しかしここで更に考えなければならない2つの大きな問題がある。 ①先進国では、生産性を大きく上げているが、 その代わりに土壌を損耗し、 遺伝子組み換えも含め、生態系の人間も含めて バランスを壊してしまっている。 ②低所得国は、土壌はまだ健全であると思われるが、 人道支援の名の下での医療・衛生サービスの向上による 人口増で、結果的に貧困と飢餓と戦争に よる人口調節を強いられてしまう。 なぜ、先進国は、自国の資源を壊してまで、低・中所得国に穀物を輸出しているのか? 両者ともに不幸であるのに、なぜこのような事態が続くのか? 社会のこの手の問題を読み解くには、 「だれがこの事態で得をするのか」を考えれば良い。 まず、この産業の基幹部分を世界で誰が握っているのか?を 調べること。 彼らこれを握っているものにとっては、各地域が自国の特質に応じた バランスの取れた節度ある成長と発展を目指すより、 アンバランスな成長・発展をしてくれた方がいい。 それは、後者の方が触れが大きく、 従って無駄が生じる確率が高くなり、 その振り子の動く時には、必ず利潤が得られるからである。 こうして農業を見て行くと、人口問題に始まり、製造業のみならず 医療等サービス業から幅広く文化まで、経済発展の諸相、 社会の紛争・戦争の問題まで、解りやすく見えてくる。 現在推進されているグローバリズムの代表的動きである TPPの標語、「より安価な経済的商品の流通」という言葉の裏には、 各地域の特性に応じた自立・自助&自己解決の能力(国権)の喪失と、 かつ世界的な無駄・無理の内包・蔓延が隠されていることを 見抜かなければならない。彼らが進めている安い労働力の受け入れ (代表的なものが、「難民・移民の受け入れ」)は、 文化・教育コスト、治安防災コスト等のマイナス面を 無視していることからも容易に解ってくる。) ちなみに、戦略的農産物輸出(自国の最低限の必要量を超えた 領域にまで農業を保護すること、例えば輸出補助金支援等)を 農業先進国である、米国、フランス、カナダは行っている。 大した農産物輸出も行っていない日本が、 補助金について、米国からとやかく言われる筋合いは全くないのである。 おそらく今回のTPP合意?で「米」よりも先に、 酪農業が壊滅するだろう。そうして、「安い肉やミルク」の名目で、 不健康な食品が大量に入ってくることとなる。 今までは、戦後の米国の余剰穀物救済策として、 米国製飼料の輸入とそれに呼応した蜜飼システムの導入により、 安価な牛乳・肉が大量供給され、その代償に、大腸がんや アトピーの大量発生を招いてきた。 しかしこれからは、ダイレクトに完成品として それらの牛乳や肉類が入ってくることとなる。 実態は、あまり変わらないが、自己解決能力の幅が 狭まることは間違いないだろう。
- 2016.06.11
- 23:02
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